Ti-6Al-4V鍛造 ボルトに対する優位性
ベータチタニウムの製品の主幹製品はボルトです。
基本的にTi-6Al-4Vを使用し螺旋部を転造で仕上げています。
そしてもう一つ重要なポイントが鍛造材を使用しているという事なのですが、今日はこの鍛造について詳しく書いてみたいと思います。
まず基本的に通常Ti-6Al-4Vと呼ばれる金属は全て鍛造されている状態で出荷されてきます。
基本丸材しか存在しないのですがそれは他の金属のように溶かしたり伸ばしたりという事が出来ない為に金属の精製炉からあがってきた”だいたい丸材”を鍛造、つまり叩いて鍛えながら丸材の形にします。
ですのでTi-6Al-4Vというものが世にでている時点で基本的には全て鍛造なのですね。
さてさてここからが本題、
じゃあなぜわざわざベータチタニウムではTi-6Al-4V鍛造だと言う事をアピールしているのかというとそれには理由があります。
チタン合金の種類には大まかな分類
α相
α‐β相
β相
の三種類がありベータチタニウム製品の全ては基本的にα-βチタンに分類されるというのは以前に書かせていただきました。
ここでα-β相とβ相の違いついて科学的に説明するとα-β相は最密六方格子の低温安定相でβ相とは体心立方格子の高温安定相…
って金属材料系の専門しかわからない違いがあります。
これをネジ屋であるベータチタニウムが実際に作業し製品を作成して様々な試験にかけた結果で簡単に説明すると
α-β相は、ずれやすく
β相は、ずれにくい
というイメージを持っていただければよいと思います。
金属の面白いところで
硬さ、強さ、強度、剛性、という言葉は似ているのですが全て違う特性を指すものなのです。
高強度や高剛性という言葉だけで金属の強さというのは中々顕せないものなのです。
ちょっと話がそれてしまいましたが金属の強さというところの話は後日改めて書いてみたいと思いますのでここから本題の鍛造について話を戻してみます。
上記で書いたのですがα-β(Ti-6Al-4V)はβ相に比べてずれやすい
つまり伸び縮みに対して優れているのです
(相がずれにくいと伸びずに破断します)
ですので例えばボルト(ねじ山)に必要な締め付けトルクに対してのスプリングバックがかかりやすく締め付けたときに安定して締結する事が出来ます。
それに対してβ相は確かに剛性は高いのですが伸びが少なくボルトにした際に相手側にばかりスプリングバックをもとめてします傾向にあります。
ボルト、更にここではピックアップしてみるとねじ山としてはα-β相のTi-6Al-4Vが優れている箇所が多いのです。
ですがβ相というのは伸びがなく非常にずれにくい、つまり存在がずれにくいでねじ山意外では非常に良い特性を持つ金属なのです。
そこでベータチタニウムのTi-6Al-4V鍛造ボルトなのです。
ベータチタニウムのボルトはあらかじめ鍛造されて出荷されてきた丸材をカットして頭の部分(六角穴とその周囲)をさらに熱間鍛造をしています。
α-β相であるTi-6Al-4Vをβ相の高温安定相まで引き上げてβ相を持たせます。
一度β相まで上がった組織というものは常温になってもβ鍛造と呼ばれる状態になるのです。
通常のTi-6Al-4Vを更に熱間鍛造することによりα-β相の胴部にβ相の頭部をもつ複合特性のTi-6Al-4Vを作り出すことが出来これにより螺旋部から胴部にかけては適度なスプリングバックを残し、ボルトの首裏から頭部は高剛性高強度のボルトを作り出すことが可能になるのです。
よくチタンのボルトは緩みやすいというご意見をいただくのですがそれはずれやすいα-β相のみで構成されている為、頭部も伸びですれてしまい力が抜けたときに一緒に動いてしまうからなのです。
ボルトという決められた形状の中でTi-6Al-4Vの特性をフルに生かす為には?
たった一本のボルトですが実はこんな事を考えて作っています。
今回書いたのはあくまでも鍛造という手法にスポットライトをあてたのですがまだまだ教科書には載っていないネジ屋の技術というものが沢山あります。
流石に加工に関するノウハウは表に出せないものが多いのですがこういったものの積み重ねでベータチタニウムはボルトを作っています。
たかがネジ
されどネジ
これからも常に新しい技術を入れながらベータチタニウムの製品は進化させて行きたいと思います。