ベータチタニウム オフィシャルブログ

2007年11月15日

バネ下荷重の低減から実感出来る性能についての雑記 その2

さてさて昨日の続きを書いてみようと思います。

『無駄な動き』

単純に考えてサスペンションとはどのような動きを必要とするのか?

単純にバネだと考えれば(あえて走行性能を無視してみる)まず

「真っ直ぐ伸び縮みするか」が必要となります。

しかし、サスペンションというのは直角ではなく常に斜めの力が掛かっているのですよね。
走行中だと水平方向に掛かる推進力と路面から掛かる抵抗を常にサスペンションは受け続けているのです。

まず最初に考えたのは走行中に路面から力が掛かるということは力がドコに掛かるのか?
力というのは基本的に締結面であったり回転軸上、または明らかに剛性の低いところ(細い、又は薄い)に集中する傾向にあります。

という事はサスペンションの周囲の力を整流化させてあげればサスペンションの力がキチンと発揮できるのではないかと考えました。

力を整流化するという事はいままで逃げていた力を逃がさなくする事。
簡単に言うと剛性を上げれば力を逃げずに受け止められるだろう。と考えました。
そこでサスペンションの周囲の部品について考えてみる事にしたのですが基本的に現代のバイクの剛性を上げるといっても大抵は不必要なほどトップブリッジやアンダークランプが大型しておりアルミニウム系といえども十分な剛性は保たれていました。
(剛性とは単純にその部材の総体積を増やす事によって上がります)

最初はトップブリッジをTi-6Al-4Vで作ってしまえば剛性は飛躍的に上がると思ったのですが、製造を考えればとても現実的ではない(加工コスト、材料費)

となると現状のの部材を使いつつピンポイントに力の掛かるところに補助的に剛性を上げてしまえば良いのではないのか?と考えました。

そういう力が逃げがちになるポイントは『その塊で最も細い所』

そうです『ボルト』です

ピンポイントにとなるとやはり取り付けの『ボルト』を高剛性に変えてあげればその周囲の剛性を上げれるのではないかと考えました。

まず目を付けたのがアクスルシャフトのピンチボルト

ここは上下に常に力が掛かるうえに締め付けでかかるネジのトルクがそのまま剛性になる箇所だったからです。

基本的に力が掛かろうとするときに開こうとするこのポイントにTi-6Al-4V鍛造材のボルトを使用することによってアンダークランプの剛性アップが可能になりました。

と、言う事は今までのボルトでは多少なりとも伸び縮みがあったということがわかります。

いままでアクスルシャフトという軸を締結していたボルトが伸び縮みしていたという事はその伸び縮みの分その力の動きがサスペンションに対して常に無駄に力を伝える原因だったという事です。

たった数本のボルトを交換する事によってサスペンションに対する力の整流化が出来ました。
キレイに力が掛かるようになったサスペンションは今まで無駄に使っていたパフォーマンスをもっとサスペンションの動きに使えるようになったということですかね?

引張強度というもので市販金属の中では特筆した数値をもつTi-6Al-4Vだからこその効果だと思いました。

なんだか読み返してみるとダラダラグダグダで若干ニュアンスの違うところのある内容なのですが、最初に感じた初心を思い出す為に書いてみました。

ボルトに出来る事

ボルトにしか出来ない事

これからも色々考えてみたいと思います。

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2007年11月14日

バネ下荷重の低減から実感出来る性能についての雑記

チタンの製品を造っていると言うとよく言われるのが

「バネ下荷重減らす為ですよね!」

っと言われます。

Ti-6Al-4Vという金属の特性は確かに鉄系統よりも比重で60%程しか無いので鉄系統から換装すると軽量化にはなります。

例えば単純にバイクのフロント周りのボルトを全てTi-6Al-4V化してしまったとしていったいどれほどの重量を減らす事が出来るのでしょうか?

恐らく数百グラムだと思います。

「数百グラムでバイクの乗り味が変わるのか?」

「変わったとしても本当にそれが良い方向に向くのか?」

このブログを読んで頂いている方の中にもそう考える方は多いと思います。

実際数多くのレースサポートの実績があっても

【プロにしかわからないのでは?】

っというご意見も多数頂きました。

やはり重要なのは『体感』出来て『感動』出来るもの

そこで自分自身がライダーとしてもドライバーとしても並以下のマツヤマが一般人代表として自社製品のテストでここ一年色々な車両で色々なテストをしてきました。

ボルト数本でバイクや車の動きが本当に変わるのだろうか?

実際に最初はマツヤマも半信半疑だったんですよ

けれども多くの車種でテストし多くの方とお話する中で色々と発見がありました。

まず『バネ下荷重というのは相対効果である』

と言う事。

バネ下と呼ばれる部分と人間も含めたその他重量の対比でバネ下重量の低減による効果は違うのだという事です。
バネ下とその他の重量の対比差が大きければ大きいほど軽量化の効果は高くいということです。

そして、大事なのは軽量なのではなく

『足回りの軽快さ』

だったのです。

軽量と軽快

非常にニュアンスが近いのですが実は意味合いが違います。

軽量ならば軽快なのでは?
と思うでしょうがそれだけだと半分しか合っていません。

例えばバイクの足回りというのは基本的にサスペンションが重要となってきています。
単純にサスペンションの動きが良いとバイクが軽く感じますよね?
(柔らかい硬いの話ではないですよ)

そこで私は
『サスペンションが良く動く為には?』

と考えずに

『サスペンションという機械がどうやったら効率良く動くのか?』

ともう一歩引いた視線で俯瞰的に要因の解析をしてみました。

サスペンションの役割は『バネ』

『バネ』に求めるのはスムーズな動き

スムーズな動きを実現するのに不必要なのは『無駄』

『無駄』を無くすのには…

まず、『無駄』なものって何だろう?

ここで言う『無駄』なものとは実質的なものではない

『無駄な動き』と考えました。

次回に続く…

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2007年11月12日

Ti-6Al-4Vボルトについての雑記

あなたは今から美味しい料理を作ろうと思っています。
あなたは世界中から食材を集めます、
美味しい料理を作るため、
健康な料理を作るため、

そして自分の納得する料理を完成させる為。

あなたは今から自分のマシンを造ろうと思っています。
あなたは世界中から部品を集めます、
速いマシンを作るため、
好みのマシンに近づくため、

それは自分の納得するマシンを完成させる為。

一つの料理を完成させる為に必要なのは、食材、人、そして調味料

ここでいう調味料とは『塩』

全ての料理の基本であり、食材の味と食材の魅力を引き立てる塩

決してそれ自身で主役になることは少なく、
それ単体で自立しにくい存在。

しかし、それ無くしては料理を完成指させる事の出来ない
必要不可欠なピース

素材の味を余すことなく引き出す為に必要なのは
良い塩ではないでしょうか?

上質な塩は料理の新たな側面を引き出せます。

ベータチタニウムで造られるボルトはそんな一粒の『塩』なのです。

決して見た目の美しさだけではなく、満足する味を発揮できる『塩』
使う事によって乗り手にしっかりとその存在をアピールし、
尚且つマシンのクォリティを向上させる
Ti-6Al-4Vチタン合金で造りだす『ボルト』

いまお使いの塩をちょっと上質な物に変えることに
よって得ることの出来るテイスト
いまお使いのボルトを必要な箇所だけTi-6Al-4Vに変えることに
よって得るフィーリング

Performance of Your Force

ベータチタニウムのボルトは感じる性能をお届けします。

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2007年10月19日

β鍛造を考える(最終回)

これでα-β合金とβ合金の使用事例などを分かっていただけたのでは?
と思いますが・・・・・・・。

今日は「β鍛造を考える(最終回)」

もっと、深いところに行きますので、ココまでのところで分からない人は最後の数行だけでも読んでくださいね。

さて、本題です。

αーβの組織の合金を加熱するとβ組織になります。
β組織に変わる温度を変態温度とか変態点といい、900℃近辺がその温度と呼ばれています。
α-β合金の鍛造は、この温度帯で行われています。

しかし、純チタン・β合金はココまでの温度に上げなくても、冷間もしくは温間と呼ばれる比較的低い温度で鍛造が可能です。
これは100gの材料から100gの製品ができる事がベストで、歩留まり(製品に対する材料比率)をよくする為に純チタン・β合金には鍛造という工法が取られいます。

しかし、64Ti(ロクヨンチタン)においては、純チタン・β合金と同様の工法が取れません。

まずは下の表をご覧下さい。

α-β合金とβ合金の性質です。

ボルト製造業者ですので、ボルトに当てはめると良く分かりますが、最強を求めるならば両者の利点を取り入れた材料がが必要になります。

現在のところ、β合金で両方の欠点を補った材料を見た事がありません。市場での流通量が非常に少ないα-β合金のSP700ぐらいでしょうか?(見た事も触った事もありませんが・・)

だから、航空機エンジン部品に64Ti(β鍛造)

深海6500の隔壁板に64Ti-ELI(β鍛造)なのです。

絶対妥協できない部品ですから・・・・。

最後に

α-β合金β鍛造する事によって破壊靭性・亀裂伝播速度・耐クリープ性を向上させる事が出来ます。これは理想の超高強度チタン合金になります。

私たちは上記と同じβ鍛造と呼ばれる工法で、鍛造を打ち、切削加工後、転造によってボルトを製造しています。

今年、ヨシムラジャパン様は私たちにプレゼントをくださいました。

それは8時間耐久レース優勝車両に、私たちの作ったボルトが装着されていた事です。

8時間耐久レースでトラブルは一切無く、優勝した

ありがとうございました。

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2007年10月18日

β鍛造を考える(2回目)

今日はβ合金のお話です。

昨日はα-β合金の話だけで力尽きてしまいましたが、一気に書こうと思えどもなかなか文章が進みません。

今日はβ合金の話になります。

β合金

一番、身近にあるチタン合金です。
15-3-3-3(ジュウゴサンサンサン)と呼ばれる合金が流通量が多く、身近にあるチタン合金です。
もっとほかに呼びやすい名称は無いものか?とも思いますが、業界ではこう呼ばれています。

正式には
Ti-15V-3Cr-3Sn-3Alと表記され、15%のV(バナジウム)3%のCr(クロム)3%のSn(スズ)3%のAl(アルミ)が含まれています。

64合金(Ti-6Al-4V)は6%のAl(アルミ)と4%のV(バナジウム)が含む事を考えると、希少金属の添加物が多く64合金に比べ材料費が高い事が伺えます。

ただし、冷間加工性にすぐれ、歩留まりが良く、製品の製造時間を短縮できる事から、材料コストと製造コストの両方をを抑える事が出来ています。また、高付加価値製品に使用される事が多いために、人の目に触れる事が多くなっています。

代表格はやはり「メガネ」です。
最近の眼鏡屋さんにはチタン合金製のメガネが10年前に比べると、どれにしようか悩むほど多く並んでいます。

また、形状記憶合金って知っている方も多いと思いますが、これがチタンを含む事を知っている方は少ないのではないでしょうか?

正式にはTi-Ni合金と呼ばれ、Ti(チタン)50%、Ni(ニッケル)50%の合金です。
これもメガネや女性の下着に使われています。
女性の下着の着け心地は分かりませんが、メガネに関しては、プラスチックレンズとの併用により非常に快適です。

β合金のボルトに関しては、あまり広まっていないのが現状です。
ひとつの原因に航空機・医療に使われるボルトにはβ合金は認可されていないのが原因でもあるように思えます。
認可されている合金は64合金です。

最後に
「やってしまいました。文章ばっかりです。」

やはり、写真が無いと寂しいですよね。

岡山県の山中で見つけた「田んぼ」です。

私は野球を知らないのですが、尼崎は阪神タイガースの国?(失礼!)というのは良く知っています。

会社が尼崎にある以上、地域に貢献しなければなりません。
まずはこの写真でお許し下さい。

では、また明日!

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